2000年3月 No.98

日本ビタミン学会第52回大会を主催するにあたって

岡山大学医学部 小児科学教室  教授 清野 佳紀 

清野 佳紀氏

はじめに
    歴史的に見て、日本におけるビタミンDの研究の成果はめざましいものがあります。ビタミンB1の発見をした鈴木梅太郎博士に始まり、ビタミンDの分化誘導作用を発見した須田立雄博士や、ビタミンD受容体KOマウスを世界で初めて作成した加藤茂明博士にいたるまで、つねに世界の注目を浴びてきました。
    本学会では、近年進歩の著しいビタミンDの研究成果にスポットを当てました。また、近年急速に増加しつつあるコメディカルの会員が興味を寄せている、ミネラルに関する特別講演をもうけました。参加される会員の皆様には必ずや、ご期待にそえる内容と確信いたしております。。DHAによる老人性痴呆の予防・改善作用が期待できるものとおもわれる。 

    このたび第52回日本ビタミン学会を、岡山にて開催させていただくことになりました。前回岡山で本大会が開催されたのは、昭和35年5月9〜11日の第12回大会であり、この時の大会委員長は、故濱本英次岡山大学名誉教授(小児科学)でありました。濱本先生は私の二代前の教授であり、40年の歳月がたっています。私の専門はビタミンDですが、故濱本名誉教授のご専門は水溶性ビタミンでした。
    クローニングは加藤茂明氏のグループによって、達成されました。最近のビタミンDの研究成果の大部分が日本人研究者によって成し遂げられていることも、特筆すべきことであります。
    さて本大会は5月19日(金)・20日(土)に岡山東急ホテルにて開催されます。第1日目午前には、ビタミンD、B6、C関係、第2日目終日はビタミンA、カロチノイド、E、B1、B2、B12、ビオチン、ニコチン酸、およびバイオファクターなどの一般講演発表、第1日目の午後には1会場のみとし、特別講演、学会賞受賞講演などのプログラムが行われます。
    今回、特別講演者として、カリフォルニア大学生化学教授Anthony W. Norman教授をお招きしました。彼はビタミンDの研究発表の場で国際的にもっとも権威のあるVitamin D Workshopの主催者であります。蛇足ですが、私自身もVitamin D Workshopには毎回、招待講演者として招かれています。なお、この特別講演には同時通訳をつけますので、是非多数のご参加をお待ちしております。
    さらにもう一人の特別講演者としては、安本教傳 椙山女学園大学教授をお招きしました。みなさまご承知のように、安本教授はミネラルの専門家であります。現在医学部の周辺には、従来の看護学校、検査技師学校、放射線技師学校が改組され、多数の保健学部や、看護大学が設立されています。ビタミン学会には、このように急速に増加しつつある、コメディカルの人たちの養成大学の在学生、あるいは大学院生の研究発表の場として、重要な役割があると思います。そこで、これらのコメディカルの人たちにも大変関心があると思われる、ミネラルの諸問題をテーマに取り上げました。
    今年度の学会賞受賞講演は、高知大学農学部、味園春雄教授の「細菌の新規NAD(P)ならびにビタミンB6酵素に関する研究」、東京大学分子細胞生物学研究所、加藤茂明教授の「ビタミンD作用機構の分子メカニズムの分子生物学的解明」ならびに、岡山大学医学部 田中弘之助教授の「小児科領域におけるビタミンDの代謝調節と作用に関する研究」の3演題があります。それぞれ素晴らしい研究成果の発表がありますので、ご期待下さい。
    このように本大会では、従来あまり取り上げられなかったテーマを特別講演に選び、日本ビタミン学会の将来の飛躍に寄与したいと考えております。 

 
 

老人性網膜黄斑変性症(AMD)とルテイン

(Nutritional and Environmental Influences on the Eye より)
AMD(Age-ralated macular degeneration)とは
    AMDは眼の網膜の黄斑部分が変性する病気で、欧米では高齢者の盲目の主な原因である。AMDは血液の漏れを引き起こし、出血性黄斑症を発症し視力が失われる。新生血管の状態により、乾燥型と湿潤型に分類される。またAMDは特に加齢と関連している。Blue Mountain Eye Studyによると、AMD患者は全人口の1.9%であり、55歳以下ではみられないが、85歳以上では18.5%の人が罹患している。Framingham Eye Study (us)やBeaver Dam Study (us), Finnish Oulu country Studyでも同様の結果が得られている。コーカサス人は発症リスクが高く、ラテンアメリカ人の発症リスクは非常に低いことから、遺伝的要因の強いことがうかがえる。また他の調査でもリスクファクターとして家族的因子があげられている。
    その他、性差もみられ、女性の方が男性よりリスクが高い。また閉経後に湿潤型AMDの頻度が減少することからも、エストロゲンが関与していると思われる。心血管疾患や特に高血圧の危険因子は、AMDの危険因子でもあり、高HDLコレステロール、喫煙、太陽光線への曝露、眼組織中メラニンの低濃度(メラニンはフリーラジカルを生成もし、抑制もする)などがあげられる。後者3つのリスクファクターはそれぞれ、酸化的状態との関連が深い。
    AMDは多様な因子が関与している。しかし、主要因子の一つとして、酸化障害が確証されている。網膜は代謝活性が高く、他の組織より血流も多い。
    このような環境下で、網膜の酸化、高酸素圧、光線(紫外線等)は最終的に一重項酸素、不飽和脂肪酸の過酸化を起こす可能性のあるフリーラジカルを生成する。 
    ところで、網膜中のカロテノイドやビタミンEはAMD予防に働く可能性があるといわれる。Snodderlyによると、中心窩と網膜の周囲が、AMDを発症する際に最初に変性がみられる部位である。それらは正常な網膜でさえ加齢により低下する杆体光受容体が最も多く存在する場所であり、過酸化脂質により生成されるリポフスチンが蓄積される場所である。Snodderlyは中心窩のビタミンEとカロテノイドが低濃度の場合、AMDの症状進展を促進する可能性があると示唆した。
疫学的調査
    近年、カロテノイドとその効果についての疫学調査が増えているが、ルテインとゼアキサンチンがAMDのような黄斑部の疾病の危険率を低下させるという結果はまだほとんどみられない。
これらの調査は食事またはサプリメントからの摂取による効果について研究が行われた。しかし、現在はルテインとゼアキサンチンのサプリメントの入手が容易ではないため、サプリメントを除いた調査が報告されている。他のタイプの疫学調査では、血清中微量栄養素とAMDの危険率との関連を観察した。表にルテイン、ゼアキサンチン、その他の微量栄養素の研究結果を示した。1985年にすでに栄養状態がAMDの危険因子である可能性が示され、その後、栄養的因子とAMDの危険率の関連についての調査結果が報告された。 

 
 
 

経口避妊薬(ピル)と栄養(3)

(Nutntional Concerns of Womenより)
心理的に影響する障害
    うつ病的感情の変化とトリプトファン代謝での異常との関連性が指摘されている。先ず第一に、合成ステロイドによるトリプトファンの脳への取りこみにより、5-HT合成に必要な量を減少させる。第二に、この合成に必要とされる、5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ(B6依存性の別の酵素)は、共役エストロゲンによりピリドキサルリン酸塩に対して競合しやすい。第三は、経口避妊薬投与中の肝臓のトリプトファン代謝の攪乱が、間接的に脳内セロトニン値での変化を通じてうつ症状を起こすかもしれないことである。論点は最も研究の進んでいる代謝性脳内変動についてが主となる。
    TPアーゼを刺激することによって、合成エストロゲン(及び妊娠期間中の内因性エストロゲン分泌の50倍の増加)は、トリプトファン代謝を脳内セロトニン経路から、主要な肝臓のキヌレニン―ナイアシン経路への変換を促進する。このトリプトファン代謝のキヌレニン―ナイアシン経路への変換はセロトニン合成によるもので、尿中キサンツレニン酸排泄の増加により立証されている。5−ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA、5-HTの最終産物)の24時間尿排泄が減少することは、Shaarawayらにより示されている。
    ホルモン性避妊薬の精神面の副作用に関する数々の研究は、他の多様な精神状態がこの条件下で認められているにもかかわらず、うつ病的心理状態にのみ焦点を合わせている。事実、ピルの使用に関連する心理学的副作用は、元来、多面的である。最近の学術文献により、ピルに伴ううつ症状は、器質性でない主要なうつ的症状とはあきらかに異なっているらしい。うつ病は、ごく少数の女性のみで発症がみられるにもかかわらず、エストロゲン−プロゲストーゲン併用型避妊薬を服用した時の合併症として認識されている。この発症事例については未だ議論が活発であるが、恐らく女性の約5-6%に発生するであろうとされている。Kutner及びBrownの研究結果と同様に、Masse及びRobergeは、経口避妊薬とうつ症状との関連性を証明することが出来なかった。MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory:ミネソタ多面人格検査)を実施した場合、併用型製剤の比較的低用量(エチノール・エストラジオール30μg)の長期間に渡る使用後のピル使用者のうつ症状判定は、OCs非使用者のコントロール群のそれと同等であった(図2)。ピルの使用者でうつ症状に悩まされた者はなかった。Triphasilムに関する最近の研究で、使用開始の初期段階、即ち6回の月経サイクルで、何ら心理学的に影響のある変化を認めなかった。上記3つの前述した試験結果の信憑性は、MMPIの様な客観的及び包括的な判定方法を試験に採用したことである。


図 1ヵ月間のビタミンB6補給後の経口避妊薬(ピル)
長期間使用者と非使用者のMMPIによる心理学的変化
L:虚構点,
Pa:精神病質性,
Si:社会的内向性
F:信頼性,
Pt:精神衰弱性,
K:修正点,
Sc:精神分裂性
Hs:心気性
 
*文献
1.Goldberg J, et al, Am. J, Epidemiol, 128, 700-711, 1988. 
2.Drews CD, et al, Invest. Ophthlmol. Vis. Sci., 34(Suppl.), 1153S, 1993. 
3.Seddon JM, et al, J. Am. Med. Assoc., 272, 1413-1420, 1994.
4.Mares-Perlman JA, et al, Arch. Ophthalmol., 114, 991-997, 1996.
5.Blumenkranz MS, et al, Ophthalmol. Vis. Sci., 34(Suppl.), 1133S, 1993. 
6.Mares-Perlman JA, et al, Ophthalmology, 96, 552-558, 1986.
7.Vitale S, et al, Invest. Ophtalmol. Vis. Sci.,(Suppl.), 1066S, 1993.
8.Tsang NCK, et al, Doc. Ophthalmol., 81, 387-400, 1992.
9.EDCC(Eye Disease Case-Control)Study Group, Arch. Ophtalmol., 111, 104-109,1993. 
10.Sanders TAB, et al, Am. J. Clin. Nutr., 57, 428-433, 1993.
11.West S, et al, Arch. Ophthalmol., 112, 222-227, 1994.
12.Alpers JR, et al, Invest. Ophtalmol, Vis. Sci., 36(Suppl.), S9, 1995. 
13.Mares-Perlman JA, et al, Arch. Ophthalmol., 113, 1518-1523, 1995.

 
 
 

ビタミンCによる高血圧の治療

(The Lancet Vol. 354, 2045-2049, 1999より) 
高血圧症の実験的研究では、酸化反応物の増加が病因のひとつであると示唆されている。また疫学的研究では、食事からのビタミンC摂取と、高血圧及びその後遺症との間に逆相関の関係があるといわれている。そこで我々は、高血圧症の治療におけるビタミンCの効果について研究を行った。

方法:無作為二重盲検プラセボ−コントロール試
        験
 

対象:高血圧症患者39名:冠状動脈疾患、糖尿
        病、心不全、1ヶ月以内の抗酸化剤または
        エストロゲン使用者は除いた。

投与量および期間:2g摂取2時間後と500mg/日
                           摂取30日後に測定 

測定条件:一晩絶食、測定前24時間禁煙


・血漿中ビタミンC濃度は生化学的範囲で増加した。
 投与前:50±12μmol/L 2時間後:149±51μmol/L 30日後:99±33μmol/L
・平均血圧の変化と血漿中ビタミンC濃度との間に逆相関関係がみられた。
図 ビタミンC投与による血圧の変化  研究者のコメントおよび考察
この研究で長期間のビタミンC投与は、高血圧症患者の血圧を下げることが示唆された。この結果はこれまでの介入試験の結果と同様である。この低下のメカニズムについては、まだ研究の必要がある。動脈内のビタミンC高濃度は、高血圧症患者の内皮機能に好影響を及ぼす可能性がある。またビタミンCによる治療は、全身の五酸化二窒素やプロスタサイクリン産生には影響がなく、さらに過酸化脂質や血管収薬(8-epi-プロスタグランジン)にも影響を及ぼさないことが判明した。しかし、血管壁内の疾病は急性反応ではないため、全身による指標には限界がある。この研究結果を証明するためには、大規模で長期間の研究が必要であるが、現在のところ、ビタミンC500mg/日の投与は高血圧症患者の血圧コントロールに有用であり、費用をかけずに、また処方薬の副作用もなしに、適正な血圧に下げることができるといえるであろう。
これは治療の代用ではつよく、我々は従来の治療を止めることは望んでいない。しかし、ビタミンCが健康維持の上で重要な役割を果たしている。という事実を証明したことにもなる。

※文章中のビタミンCはアスコルビン酸を意味しています。 


 
 
 

栄養所要量に対する米国と欧州の考え方と見解

はじめに
    1992年、ヨーロッパの食品科学委員会(SCF:Scientific Committee on Food)は、欧州共同体に栄養所要量、栄養調査等についての見解を報告した。これをきっかけとして、1993年にイタリア、スペイン、などで栄養所要量が発表され、ドイツ、オーストリア、フランス、スイス、オランダの各国では現在検討中である。しかし、法規制緩和や上限摂取量などの新しい概念により、1992年時の推奨量の見直しや、科学的根拠の収集が必要になってきた。アメリカやカナダではすでに議論が始まっている。
    アメリカの栄養科学アカデミー(National Academy of Science:NAS)はV. Young教授を委員長とする常任委員会を設置し、科学的調査を開始した。さらに2つの小委員会―I. Munro博士を代表とする上限摂取量に関する委員会とS.Murphyを代表とするDRIsの使用に関する委員会―を設置し、さらに調査を進めた。現在までに「ビタミンD・カルシウムとミネラルの関係(1997年)」と「葉酸とその他のB群ビタミン(1998年)」についての報告書が提出された。FNB(US Food and Nutrition Board)によるアプローチの背景や概念を理解するため、またヨーロッパの産学間の討論を進展させるために、EANS(European Academy of Nutritonal Science:欧州栄養科学アカデミー)とTNO Nutrition and Food Research Instituteは1998年12月ワークショップを開催した。そこで報告された、アメリカの考え方や活動状況、ヨーロッパの過去と現在の状況などについて、以下に紹介する。 

FNBの一般的考え方及びアプローチ
(Vemon Young教授)
    集団を対象にしているために、大多数の個人の必要量を超えるレベルが設定されているRDA(栄養所要量:米国最新版1989)を、個人レベルで適用できるようにするため、摂取推奨量(intake recommendations)の概念を取り入れたRDAの改定が必要となってきた。特に慢性疾患のリスク低下を考慮することは新しい試みである。しかし、単独の栄養素摂取や栄養素間の相互作用に関連した影響などについて、データが不足していることや、青年期及び幼少期などについても有効な情報が不十分であることが、問題となっている。
    DRIs(Dietary Reference Intakes:食事摂取基準)の設定にあたっては、適正量を評価する基準が重要であり、推奨摂取量の国際統一基準が出されれば、これは統一されなければならない必須要因の一つである。

ビタミンB6、葉酸、ナイアシンの許容上限摂取量についての事例説明
(Robert Russell教授)
     National Research Council (NRC) による方法での栄養素リスク特徴化が、最近B群ビタミンに応用されている。
ビタミンB6:上限摂取量の基になったのは感覚神経症への影響であり、これに対するエンドポイントのため、NOAELが200mg/日に設定された。また500mg/日以下の用量 のピリドキシンを用いた研究が少なかったため、uncertainty factor(UF:不確定係数)は2が選択され、ULが100mg/日に設定された。 

葉酸(合成):用いられた副作用の指標は、ビタミンB12欠乏のヒトで、葉酸による神経症の進行あるいは悪化であった。上限摂取量 が食物中の葉酸ではなく、合成葉酸で設定されたことは重要なポイントである。またデータ不足のため、NOAELよりむしろLOAELが基準となった。LOAEL 5mgというのは、ビタミンB12欠乏の患者に5mg投与し、神経症の進行がおきた例や、それ以上の用量 を投与した100例が基になっている。そして神経症の合併症が起こる可能性などを考慮し、UFは5が用いられ、合成葉酸のULが1mg/日に設定された。しかし、現在行われている冠動脈疾患のリスク予防に関する研究では、葉酸が2.5mg/日投与されていることなどから、葉酸のULを見直す必要もある。さらに米国ではシリアルへ葉酸が強化されており、サプリメントの使用と組み合わせると摂取量 が1mg/日を超えることもある。


ナイアシン:副作用に関するデータのほとんどは、ニコチン酸の薬剤調合剤で治療されている高脂血症の患者の試験から得られたものである。影響を受けやすいが良性である副作用は潮紅であり、潮紅が見られると、治療の中止や投与量 の変更を行う。これを考慮し、有効なデータを基にLOAELを50mg/日に設定した。しかし、潮紅は一時的でむしろ良性な自然現象のため、UFは1.5と小さく、ULは35mg/日に設定された。

ヨーロッパの状況 (Ruud Hermus教授・A Somogyi博士)
    アメリカとは異なり、ヨーロッパでは1992年SCFより設定された推奨量を参考にしており、各国で数値が大きく異なっている。これは、推奨量に対する概念の違いも原因である。各国の推奨量は、その国の専門委員会からの科学的データや国際的な機関からの情報、または双方の情報を合わせたものを基礎にしている。さらに、推奨量を設定する際に、安全率や生物活性などを考慮して設けているが、安全率などが各国で違うことからも相違が生じる。しかし最も問題なのは、欠乏予防や組織飽和、ストレス、酵素活性を高める最大量、慢性疾患予防のための最小量などに基づいているか否かということと、年齢区分の科学的根拠が明らかでないことである。これらについては、慢性疾患予防のような栄養素の質的な見解について、ようやく最近議論されてきている。
    推奨量の使用方法(目的)も各国で違いがみられる。オランダでは、RDAは食品への添加と、消費量の把握のために設定された。イギリスでは、欠乏症の予防や栄養バランスの管理、栄養素の貯蔵レベルが適正量の基準として用いられた。北欧では、生命維持に必要な食事管理の基として、また食事と関連している疾病のリスク軽減と健康に必要であるということを理解させるために、推奨量を設定した。

結論 (Paul Walter教授)
    栄養素の推奨量や摂取量についての討論は、安全性や科学、法規制、政治的な問題と関係している。従来のRDAでは、RDAを超えた摂取量に対する科学的知見が考慮されていないことから、見直しが必要である。しかし米国での、慢性疾患のリスク低下に関する新しい科学的知見を取り入れた推奨量の確立は、かなり困難であろう。この点においては、抗酸化栄養素に関する委員会の結論は非常に重要になってくる。
     最近の進歩は、栄養強化食品やサプリメント(栄養補助食品)の重要性が増加してきたことである。消費者にとっては開かれた理解しやすい情報が必要であり、栄養強化食品や機能性北品への健康関連表示の使用を許可することが必要であろう。しかし、栄養強化食品とサプリメントの併用は安全性を考慮しなければならない。それゆえ、副作用のリスクについて消費者に忠告するために、上限摂取量を明らかにすることが重要である。

    栄養素の適切な摂取量の基準に関する重要な問題について討論が行われるべきである。EANSによる特別なワーキンググループの組織はむしろ米国の食物・栄養委員会あるいは米国栄養科学協会(ASNS:American Society for Nutritional Sciences)と協同で、この分野の発展のために重要な貢献をすると思われる。

※以上は‘Approach of the US Food and Nutrition Board to daily nutrient requirements : ‘A useful basis for the European discussion on risk assessment of nutrients? ’の要約です。
詳細はEur. J. Clin. Nutr. (1999) 52, 786-791をご参照下さい。  原文をご入手希望の方は200円分(郵送料及び配送外注費)の切手を同封の封書で当方へご依頼下さい。 


 
 

ビタミン広報センター講演会開催ご案内 


「ビタミン広報センター20周年記念講演会」
主催:ビタミン広報センター

日頃から、VICニュースレターをご愛読いただき誠にありがとうございます。
さて、ビタミン広報センターでは、今年設立20周年目を迎えます。20周年を記念致しまして、
講演会を下記のように開催する運びとなりました。近年話題となっております、ビタミンやカロテノイドの疾病予防に対する役割や最新データについて、各講師の方々にご講演いただく予定でおります。(同時通 訳)

日 時:6月16日(金)、9:50〜16:00
場 所:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2―5―1 有楽町マリオン11階) 

プログラム 
1) 開会の挨拶 
          細谷憲政氏(東京大学名誉教授) 
2) ビタミンについて 
        五十嵐脩 氏(お茶の水女子大学教授)
3) B群ビタミンの新しい話題:
              心血管系疾病予防を中心に 
     Dr. Klaus Pietrzik(professor, University
      Bonn)
4) リコペンと疾病予防 
           Dr. SK Clinton
             (professor, Ohio State University)
5) ルテインと加齢黄斑変成
          松橋 正和氏(東邦大学教授) 
6) ビタミンEの新しい話題:
                心血管系疾病予防を中心に 
         吉川 敏一氏
                    (京都府立医科大学助教授) 
7) ビタミンC:疾病予防の観点からみた推奨摂取量 
             Dr. Balz Frei
            (professor, Linus Pauling Institute) 
8) 閉会の挨拶  
          阿部達夫氏(東邦大学医学部名誉教授)

*プログラム内容、時間等は変更する場合がございます。

参加費:無料 

お問い合わせ先:ビタミン広報センター
〒143-0016 東京都大田区大森北1-6-8 
TEL:03-5763-4119 
FAX:03-5763-4121 

お願い 

 ニュースレターの宛先の変更、削除につきましては誠にお手数ですが、宛て名シールの番号を明記の上、郵便又はFaxにてご連絡下さいます様お願い申し上げます。

ビタミン広報センター(略称 VIC)は、国内外に於ける最新のビタミン研究の成果 を科学的に正確に保健、栄養関係者および消費者の皆様に提供しております。当センターは1981年に設立されました。 
大田区大森北1−6−8 〒143-0016 Tel(03)5763−4119 Fax(03)5763−4121